塾講師、数学マンは踊る

数学塾講師バイトによる数学の教え方。高校受験のための中学数学が専門。

中3「根号の近似値」の教え方

教え方、と言ったら少し大げさかもしれません。塾側としてこの問題をどう扱うべきかの話です。

 

問題 √3 = 1.732, √30 = 5.477のとき、√300と√0.3と√3000を求めよ

 

「√100は10だから、3×100の形にしておく」だとか「30/100の形にするとうまくいく」とか「3000 = 30×100に調整してみる」とか説明しても生徒にとっては意味不明です。なんでそんな形になることが分かるんだ、って生徒は思うでしょう。うまく√3と√30を使える形にする、という高度なテクニックは初学者には辛いです。

 

この問題、実は「√ の中を簡単にしておく」「有理化」「小数の根号の計算」が分かってれば楽に計算できるんです。試しに上の問題を、この3つの操作を使って機械的に解いてみると、どれも可能なことに気付けます(板書にて説明)。

この問題は、多くの教科書では根号同士の掛け算割り算のすぐ後に扱わせています。「√ の中を簡単にしておく」「有理化」「小数の根号の計算」などの計算技術は扱ってないため、上のように「調整」とか「100の形を分離」とか生徒目線では意味不明なキーワードで説明しなくてはならなくなります。

 

いや、そんなことするくらいだったら教える順番を変えれば済みます。なので「√ の中を簡単にしておく」「有理化」「小数の根号の計算」の計算技術を扱ってから、この問題を扱うようにしましょう。

 

板書

<√ の近似値の問題>

point ①√ の中を簡単にする

    ②有理化をする

    ③小数の√ は分数にして分解する

 

例 √3 = 1.732, √30 = 5.477のとき、√300と√0.3と√3000を求めよ

√300 = 10√3 = 10×1.732 = 17.32

√0.3 = √(3/10) =√3/√10 = √30/10 = 5.477/10 = 0.5477

√3000 = 10√30 = 10×5.477 = 54.77

 

実はこの板書では対応できない範囲が多少ありますが、導入としてはこれでいいでしょう。

中3「根号の中を簡単にすること」の教え方

 題名の通り。根号の中をできるだけ整数にする技術。この技術は平方根の計算において応用範囲が非常に広いです。

 

板書

<√ の中を簡単にする>

point 素因数分解をして、2乗(2つセット)のものは√ の外に出せる

例1 √20 = √(2×2×5) = 2√5

例2 √180 = √(2×2×3×3×5) = 2×3√5 =6√5

例3 √96 = √(2×2×2×2×2×3) = 2×2√(2×3) = 4√6

 

 

 解説としては、なぜ2つセットになっているものは外に出せるかというと、そもそも√2×√2 = 2で、√の中にある数字は2つセットになってれば√が外れる(外に出せる)でしょ、と付け加えます。色分けによりどの2セットなのか意識させること、二乗が二つある(すなわち4乗)パターンも理解させること、を工夫しました。

 

 上のこと自体は理解できる子が大半です。しかし、この単元の難しいのは他のルートの計算をするときでも、常にこれを意識しなくてはいけないことです。例えば答えに2√12と書いたらバツになりますし、√24×√12なんかは√ の中を簡単にしてから計算すると楽です。分数でいうと「約分」に近いです。常に意識するものです。

 常に意識できるようになるためには、√ の中がどんな数なら簡単にできるかを知っておくのが良いです。√ の中を簡単にできるできないが楽に判断できれば、常に意識するのも苦ではなくなるはず。

 

板書

<√ の中を簡単にできるorできない>

point1 大きい数(50以上)は簡単にできる可能性が高い

例1 √200 = √(2×2×2×5×5) = 10√2

例2 √55 = √(5×11) = √55 ←簡単にできなかったら元に戻す

 

point2 4の倍数、9の倍数は簡単にできる

例 4,8,9,12,16,18,20,24,27,28,32,36,40,44,45,48 ←これらは全部簡単にできる!

 

 

 ちょっと特殊な教え方かもしれないですが、我ながら良い教え方だと思ってます。教師側も「大きな数だし、ちょっと素因数分解してみるか」とか「これ2がたくさん因数にありそうだな」とか、似たような感覚を持ってるはずです。多くの教師でも大きい数だったら警戒しとけと教えますが、「小さい数」である8とか12とか18とかを警戒しない子が多いです。そこをカバーするためにpoint2が役立ちます。

 一応50という数字も工夫したんですけど、分かりましたか?「4の倍数と9の倍数は簡単にできる理論」から外れてしまう、最初の数が50(25の倍数)なんです。

 この説明では厳密には1,25,49が抜けていますが、流石にそこらへんは分かると思います。厳密性よりも分かりやすさを重視。

中3 「有理数・無理数」の教え方

整数、自然数などの用語を忘れてる生徒だったら、復習し直しましょう。

 

板書

<数の用語>

正の数……+の数。例→4, 0.5, 7/2, 6π, √2

負の数……ーの数。例→-5, -√7

整数……例→-3,-2,-1,0,1,2,3

(注意)負の数も含む

自然数…正の整数。例→1,2,3,4…

(注意)0は正でも負でもないので含まない

 

 

で、本題の有理数無理数

 

板書

有理数無理数

無理数……π, √ がある数

例 5π, √3

(注意)√4は2のことなので有理数

有理数……無理数でない数。

例 0.3, 7/3, -4, √9, 0.9999…

 

 

整数/整数の分数形に表せる、みたいな説明は初学者には理解しづらいです。厳密な証明問題をする場合は正しく理解する必要がありますが、それは高校生レベル。中学生レベルなら無理数はπと√ しかないので、厳密性に欠けますが分かりやすい説明だと思います。

 

 

 

 

 

角度問題の教え方1 中2知識の問題の基本方針

どの試験でも角度を求める問題(以下角度問題)は頻出です。

角度の問題は入試では円周角と絡めて出題されることが多いです。その円周角を習うのは中3の後半です。夏季に角度問題を対策するときは、中2範囲までの知識のみを使う問題に限定しなければなりません。この記事では中2範囲までの知識のみを問われる角度問題を対象とします。

 

角度問題で難しいのは、複合問題であることです。

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この問題は、以下の知識が身に付いてなければ解けません。

①正三角形、正方形の一つの内角はそれぞれ60度、90度であること

②辺が同じという情報をどんどん書き込み、二等辺三角形の存在に気付く

二等辺三角形で頂角が求まってるときの底角の求め方

 

ただ、この知識一つ一つを知っていても、それを使える場面がいつどこなのかを理解していなければなりません。

これに関しては昨日の記事で説明しています。

「分からない」の分類 - 塾講師、数学マンは踊る

 角度問題は複合問題であり、②(どの知識を使えばいいか気付けない)が分からない原因である可能性が高いのです。逆に、①(計算技術、公式などの知識が不足している)が原因であることは角度問題では比較的稀です。

要は使い分けを理解することが角度問題(というか一般に図形問題)では大事ということになります。

 

 

板書

<角度を求める問題のコツ>

point1 平行線(AB//CD) → 錯角、同位角に気付く

point2 辺が等しい(AB=AC) → 二等辺三角形に気付く

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point3 正三角形→60度 正方形→90度 直角二等辺三角形→45度 に気付き、書き込む

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point4 「合同」「折り返しの図形」 → 同じ角度があることに気付く

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こんな感じでしょうか(図が汚いのはすみません^^;)。使い分けを意識させる板書にしています。上では4つのポイントを挙げましたが、これはあくまでも例です。①頻出②気付けてない生徒が多い③気付けるだけで解けるようになる の3つの理由(要は時間対効果が高い)から選択しただけです。生徒によってはより多くのポイントが必要だったり、あるいは上に挙げたポイントを理解してるからわざわざ解説しなくてもいい場合もあります。ポイントは生徒によって選択してください。

 

これ以外でもポイントにしても良いと思うのは以下のもの。

・外角と内角の関係(三角形で二つの内角の和がもう一つの外角に一致するやつ。知っておくと楽)

・凹んだ四角形の角の関係(ブーメランみたいなやつ、頭+足+足=股になる)

・同じ角度のところは○と○、×と×のように書いておく(内心の問題のときに重要)

・直角三角形の一つの鋭角は90ーa度となる(aはもう一つの鋭角)

・平行四辺形の対角でない二組の角の和は180度になる

 

 

また、教師としては、中2知識までの角度問題の演習をさせるためのテキスト選びが大変です。複合問題でありポイントが多少見えづらくなっている(使い分けを頑張らなくてはならない)問題を演習させるのが好ましいのですが、それが少ないのです。普段授業で進めるようなテキストでは知識が独立しすぎていて使い分けをする場面がありません。複合問題を色々なテキストから探す必要が出てくると思います。

提案1 入試対策用テキストから、中2までの知識で解ける角度の複合問題だけ取り出す。円周角の定理がアウトなので、円が書かれてる問題にバッテンでもつければ済みます。

提案2 「中1、中2までの範囲を総復習する」というような趣旨のテキストがあって、そこに複合問題が載ってればそれを使う。中3の春期講習や夏期講習用のテキストにもよく載ってることが多いです。

提案3 中学受験用のテキストを使う。角度において中2までの範囲というのは中学受験の範囲と良い一致率をみせます。また、角度を一直線に求めればいい問題が多く、変な工夫をしなくてはいけない問題も控えめです。練習目的には使いやすいと思います。補足ですが、小学生がやってる問題だと気付くと生徒がショックを受けるかもしれないので、可能な限り隠しましょう^-^;;;

 

角度の複合問題で、丁度良いなと思った練習サイトを以下に載せておきます。

http://www.manabu-oshieru.com/chugakujuken/sansu/kakudo.html

http://www.hello-school.net/sansuz0802.html

(載せた後に気付きましたが、どちらも中学受験用の問題みたいです)