塾講師、数学マンは踊る

数学塾講師バイトによる数学の教え方。高校受験のための中学数学が専門。

中3「y=ax^2の変域」の教え方

y=ax^2の変域の問題は、教え方に悩んでる先生が多い印象です。

例えば「xの変域が0を含まないときは今まで通り計算しよう、変域が0を含むときにはyの変域の片方が0で、もう片方は絶対値の大きい方だよ」(便宜上「場合分け法」と呼びます)という、この問題ができることのみに特化した方法。自分もこれを採用してた時期がありましたが、生徒の理解度はあまり良いとも思えず、また、応用問題に対して手がつかなくなるという欠点を持ってました。正答率も高くなかったです。

で、色々な方法を試してみましたが一番効果的だったのは「グラフを書いてそれを見て変域を判断する」というシンプルな方法です。

 

この方法のメリット

①応用範囲が広い。応用問題にも結構対応できるようになる

文字式を使うような問題でもグラフを書ければできる問題が多いです。場合分け法などではそのうち対応できない問題が増えてきます。

 

②原理的・本質的に理解ができ、理解に無理がない。また、教師側の理解にもっとも近い方法である

そもそも、グラフの形から最大・最小を判断するというのが変域の本質です。さっき述べた場合分け法の原理もx=0で最小値(or最大値)がy=0になるからです。それを理解するのに、グラフを使えば無理がありません。

また、教師だって頭のなかでグラフをイメージ(書く)して判断しているはず。イメージできるのは書くことができるからです。いきなり生徒に「イメージして解くんだぞ」という無理な要求はしないように。書くのが楽々できる人が結果としてイメージするという選択肢に到達するのであって、書くことができない子にはイメージできません。

 

③簡単な変域の問題における正答率が高い

変な場合分けをしたり、勘違いすることも少ないため、正答率は高いと思います。

この方法を採用した年と場合分け法を採用した年では定期テストでの正答率が大分違いました。

 

デメリット

 

①グラフを書ける子が少ない

というか教えてなければまずできないです。「さあ、グラフを書くんだぞ」って言って書けるなら苦労しません。大抵の子はどうやって目盛りのないノートにグラフを書くのか、方法がわかりません。「グラフの書き方ぐらい分かるだろ」と教師の常識は押し付けては駄目です。

まずはグラフの書き方をしっかり理解する必要があり、そのために授業に時間をかける必要があります。

 

②授業に時間がかかる

この問題ができるようになるためには以下の様なステップを踏みましょう。

 

1.軸の書き方を教える

タテ・ヨコ方向への矢印と、y・x・0の三文字を書かせます。どんなグラフでもこれを使えばノートに書くことができるよ、高校でも同じやり方を使うんだよ、と教えれば意義も感じてくれるかと。

 

2.まずは簡単なy=ax+bのグラフから書かせる

適当な1次関数のグラフを書かせてみます(例えばy=2x-3を書いてみて、と言う)。これで何も書けない子だったら、目盛りのあるグラフ用紙でも書けてない可能性があります。目盛りのあるグラフ用紙に書けない子はノートにアバウトに書くことは無理です。手間ですが必要なので復習させてください。

 

で、書けるようなら注意点を説明します

間違えてはいけないこと

・右上がりか右下がりか(aが+か-か)

・切片の位置(bが+か-か)

アバウトで良いもの

・aの傾きの絶対値

・bの切片の絶対値

 

グラフをノートに書くときはアバウトで良いですがアバウトにしてはいけないものとしてよいものがあります。符号関連は間違ったら駄目で、絶対値関連は適当でも大丈夫です。極端な話、y=2x-3とy=1000x-30000とy=3/10x-123/457の書き方は全部同じでいいのです。符号さえ間違えなければグラフの見た目として問題ないです。

 

3.変域を含むグラフを書かせる

y=-5x+10(2<x<5)のグラフを書く、というようなことを習得させます。ポイントはx=2とx=5のときに点を打って、それ以外の範囲を消しゴムで消すこと。何問かやればスムーズにできるかと。

 

4.y=ax^2で変域を含むグラフを書かせる

同じことをy=ax^2でもできるかどうかの確認。ここまでのことが理解できていればできるかと。ここまでが「グラフを書く」ことができるようになるまでに必要なステップです。

 

5.それを見て変域の最小値・最大値を判断させる

グラフさえ書ければあとはそれの一番高いところ・低いところを見ればOKです。変に場合分けをする必要もなく、理解に無理がありません。

 

以上。これを見て分かるように、一から理解するとなると時間はかかってしまいます。なので教師としてもテスト直前期などの時間のないときにこれを教えるのは厳しいと思います。テスト前の最後の授業でまだ変域につまづいてるようなら、この問題は諦めさせて他の計算問題で得点させたほうが良いと思います。

ただ、逆に時間があるのならば、この方法はぜひオススメしたいです。習得すれば、1次関数の変域の問題、目盛りのないグラフの問題などの理解度に大きな還元がありますから長期的に見れば得です。

 

②問題を解くのに少し時間がかかる

グラフをいちいち書く時間は必要です。定期テストでは同じような問題をたくさん解く必要があるので、ちょっと問題かもしれません。

ただ、練習を重ねればグラフを書くスピードは改善します。また、グラフを書けるようになれば自然にイメージすること(最速の方法)ができる子供も出てきます。イメージできる子に対しては「イメージできるなら書かなくてもいい、ただミスはするなよ」と注意はしておいてください。

長期的に見た場合に入試のときにはせいぜい一問しか出題されませんから時間の問題はほぼ無視できますし、入試のときに場合分け法などの変なやり方を思い出せない方が問題だと思います。

 

以上から、この方法はオススメです。