塾講師、数学マンは踊る

数学塾講師バイトによる数学の教え方。高校受験のための中学数学が専門。

2015年度 埼玉県立高校入試問題 分析

三日坊主でブログを放置していましたが、慌ただしい県立入試が終わったのでまた再開したいと思います。

 

3/2の埼玉県立高校の入試問題の分析を行います。問題・解答は以下。

東京新聞:2015年首都圏公立高校入試(TOKYO Web)

 

問1 (1)~(6) 易。計算問題。

(7)  易。これも計算問題に入れたいところですが。過去問で何度も出ていた問題なので、やはりy=ax^2関連の簡単な計算(変域、変化の割合、代入)は身につけておきたいですね。

(8) 易。何年か前に前期後期で入試が分かれていた時に、後期(難しい方)で似た問題が出題されていました。前期に出てくるのは初めてです。標本調査の意味を問える、典型的ながら良い問題だと思います。

(9) 易。円周角や二等辺三角形を使って角度を順に求めていけば、補助線などの特別な工夫もなく解けます。角度の問題をたくさん演習させていれば問題ないかと。

(10) 標。埼玉県立高校の入試での場合の数の問題では、あまりテンプレに沿ったものは出題されません。単に樹形図を書く練習をさせるのではなく、樹形図で何を数えているか=意味をちゃんと理解していることが重要です。

例えばこの問題の場合、1-2というのは要は2/1のことです。2-5というのは要は5/2のことです。それが生徒が分かっていなければこの問題も解けないと思います。例えば1-2や2-5のところを指さし、「ここの部分ってどういう意味?」と聞いていくことで、生徒も樹形図の意味を考えるようになるでしょう。樹形図は書けてもそこからよく分からない、と言っているような生徒がいる場合は注意です。

(11)① 易。一応「規則性の問題」になるんでしょうか。規則性の問題の大原則はとりあえず手を動かして色々試してみる、です。

② 難。たぶん、先生が解説して理解させること自体はそこまで難しくないでしょう。規則性の問題の大原則である、「とりあえず手を動かして色々試してみる」を行えば、そこまで遠くない2020年に辿りついたときに月曜になるので、言うほど難しくはないのです。しかし、何やら難しそうだと思って飛ばしてしまう生徒が多いことが想像されます。やってみれば意外と簡単に解ける問題なのに、やろうと思わない生徒が多い。つまり、この問題を得点できるかどうかは、「やればできると思える自信」があるかどうかが重要だったわけです。

おそらく、整数問題や規則性の問題、説明問題をたくさん解いていて、そこそこ自信がなければなりません。来年度の受験生には、この問題を解けると思える自信を付けさせられるような、たくさんの演習量をこなさせてあげたいものですね。

特別な知識もいらず、単純に演習量で差が出る、良問だったと思います。

 

問2 (1) 標。「円の半径部分に補助線」もしくは「おうぎ型を作るために補助線」で、補助線の説明は付きます。問題はおうぎ型の中心角が90°ということが分かるかどうかです。これは上下の三角形の二辺とその間の角がそれぞれ等しいから合同、であることを用いれば可能です。

ところで、実はこの形は埼玉県でも数年前に似た問題が出題されています。以下の様な2つの三角形の相似を証明するものでした。

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相似の問題の中では典型的とも言える問題で、問題集に一つは載ってるはず。この問題を解いたことがある子なら、直感で中心角が90°であることが閃くかもしれません。ということでやはり演習量で出来不出来が分かれています。

(2)  標。この問題では「60°の作図ができるかどうか」「そもそも何を作図すべきかのイメージを行えるか」が重要だと思います。

前者については、やり方を教えれば済む話です。数年前には30°の作図も出題されているのでマークが必要でしょう。

しかし、後者については、なんとなく垂直二等分線や角の二等分線を引けばいいと思ってる生徒にとっては難しいのかもしれません。自分が何を作図しているのかも分からない状態では、「180°を三等分した60°を作ればいい」という思考にはたどり着けないでしょう。

私も特に案があるわけではないのですが、何を作図しているのかを意識させることが必要だと感じました。やはり良問を作りますね。

(3) 標。この手の問題はどこかの座標をtと置いて方程式を解くものが多いのですが、その必要もなく良心的です。平行四辺形の対辺は平行であるという性質を使えば、求める直線の式の傾きは求まり、座標を代入すれば切片も出ます。問1の(11)の②と同様に、この問題を見て飛ばしてしまった生徒も多いはず。関数とグラフの問題には難問が多いから、捨てた方がいい、と教わる子もいるでしょう。勝手に捨て問と決めつけず、ひとまず解いてみなさいという出題者側からのメッセージかもしれません。

(4) 標。どちらかというと中学受験でよく出題される問題ですね。一般的な中学生にとってはあまり馴染みのない問題かもしれません。図2は三角錐であって、その体積から高さを逆算すればよいということが分かれば解けます。初見でこの問題ができるようになるには相応の演習量が必要になる、ということでしょうかね。

 

問3 (1) 易。埼玉県は関数の利用の問題自体はそこまで出すわけではないですが、珍しく出したときはこういった図形の点の移動の問題が多めです。数年前にも出てたはずなので要マーク。グラフを読み取る練習ができているかどうかと、こういう図形の点の移動の問題では距離を2xやら3xやらと書くことを知っているかどうか、ですね。

(2) 難。そこまで難しくはないですが。一個目は簡単に求まります。二個目は往復のときにはAPの長さが30-3xと表現できるかどうかですが、この手の問題をちゃんと演習してた子にとってはそこまで目新しくもないはず。やはり演習量の差ですね。

 

問4 (1) 標。問題集によく載っているような問題です。埼玉県では単純な三角形の合同や相似の証明は好まず、こういった二等辺三角形の証明や、平行の証明などが好みみたいです。こういった問題は証明の時に自分が何を書いているのかを分かってないようでは解けません。逆にそれが分かっている子にとっては簡単だったのでは。

(2) 標。これまたテンプレ問題。折り返しの図形の問題では、この辺の長さを求める問題はよく出題されており、埼玉県でも数年前に出題されています。要マーク。

(3) 難。今回の入試問題では一番難しい問題ですが、別に捨て問というわけではありません。十分に演習を積んだ子なら△AIJの部分を見た時に面積比の問題だと気付くはず。面積を求める問題のうち、難しい問題では線分比から面積比を求めるのがセオリーとなっています。あとはHI:IJを三角形の相似を使っていくことで求められれば解けます。

また、これは説明問題ですが図形に書き込んで良いという条件がついています。本当なら「線分~~の延長線と線分~~の交点を~~とする」みたいな面倒なことを書かせることが多いのですが、埼玉県においてはそういう記述ができることを別に求めているわけではなさそうです。図形に補助線でも何でも書き込んで、「右図のように線を引く」と言えばいいだけです。埼玉県で求められているのは、単純に自分が行った計算の根拠が示せることなのでしょう。

 

<全体を振り返って>

①大前提として、コツコツ総合演習を積むことは大事

今回はかなり易化しました。特別な発想が必要な問題も少なく、難問のレベルも高くはありません。また、過去問の問題が少し形を変えて出てきていて、真面目に過去問等の問題演習に取り組んだ子にとっては得点しやすい問題が多かったのではないかと思います。反面、偏差値60以降の上位層は高得点を取らなくてはならず、数学を苦手とする上位層の子達にとっては厳しい入試ではないのかと思います。

数学では単元別学習とは区別した、長期的な総合演習期間が必要です。単元別学習とは、要は定期テストに出るような問題を解けるようにする学習ですが、これでは広い範囲から総合的に出題される入試問題には戦えません。

偏差値55以上の生徒に対しては、早い段階で単元別学習をひと通り終わらせ、過去問や、入試向けの問題集を使って十分に総合演習をする期間を設けるのが、本来ならばセオリーになるのではないでしょうか。

ただ、埼玉県の場合は秋に北辰の結果が大事になってくる時期ではあるので、夏休みに予習ばかり進めるのも疑問です。なので夏休みはy=ax^2までは進めて、そこまでの範囲での総合演習を行い、12月の北辰が終わり次第さっさと中3範囲すべてを終わらし、冬休み以降で全範囲の総合演習期間を設けるというのが現実的な対応でしょうか。

この総合演習期間では多種多様な問題を解くことになります。入試でよく出るテンプレ的な問題に対応できるようになることはもちろん、あまり見慣れない問題に対してもどうアプローチしていくべきかということが培われていきます。

とにかく、このような総合演習期間をどれだけ設けられたかで問1の(11)や問2以降の問題での得点差が顕著に出てくるでしょう。当たり前の結論ではありますが、数学ではこの総合的な演習量が大切です。

 

②意味が分かって、その上で考えながら解くようになるのが大事

埼玉県では公式通りに処理すれば解ける、といった類の問題は少なく、公式がどんな意味を以って使われるかに重点を置かれている気がします。

この点に関して、偏差値が高くない生徒を教えるときには注意が必要です。それらの子に対して公式を詰め込んで機械的に反復させるようなことを続けていれば、入試問題には太刀打ちできないと思います。

例えば標本調査の問題では、標本調査の意味を字面だけで理解しているのではおそらく解けないでしょう。場合の数の問題で、樹形図を書けるだけの生徒は得点できません。作図でとりあえず垂直二等分線を引くような子を育ててはいけません。ちゃんと自分が何しているかを考えさせる必要があります。

作図なら「なんでこの線を引いたの?」とか、樹形図なら「この1-2というのはどういう意味?」など、細かく質問して考えさせるのがよいでしょう。

パターン暗記は高校受験ではNGなのです。

 

来年度に向け、また頑張りましょう。

理科も見てみましたが、こちらも易化していましたね。理数科目をしっかり取らせなければならないな、と思います。